【 個人的見解と投資行動 】

フーシ派によるバブエルマンデブ海峡封鎖が今日ニュースでも流れました。中東の原油がこれで完全に止まる可能性もあり、原油価格が再度急騰するリスクがあります。

株価への影響よりも、日本のインフレ、円安への影響をより深刻に考え備えるべきでしょうね。

 

サマリー

・2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃を機にホルムズ海峡が事実上封鎖され、WTI原油は一時1バレル112ドル台まで急騰。米・イラン停戦観測と衝突再燃を繰り返し、原油価格は乱高下してきた。

・2026年7月20〜21日、イエメンのフーシ派がサウジアラビア船舶を対象に「海上封鎖」を宣言。バブ・エル・マンデブ海峡(世界の海上原油輸送の約12%が通過)は、ホルムズ海峡封鎖下でサウジ等が原油輸出に使う代替ルートの要であり、その封鎖が現実になれば「迂回路なき封鎖」という最悪シナリオに近づく。

・原油の再上昇はインフレ長期化・FRB利下げ観測後退・長期金利上昇・株式のバリュエーション調整という波及経路を通じて、株式・為替・債券市場全般にリスクとなる。フーシ派自身は「原油200ドル」の可能性にも言及しており、警戒を要する局面が続く。

1. 何が起きているのか:フーシ派の海上封鎖宣言

2026年7月20日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派(アンサール・アッラー)は、サウジアラビア船舶を対象とした「海上封鎖」の実施を宣言した。フーシ派は声明で、サウジアラビアによる長年の「不当な包囲と攻撃」への報復であるとしている。NHKなど日本のメディアも7月21日朝、この宣言を速報として伝えている。

この宣言に先立ち、フーシ派は4月にも紅海の入り口にあたるバブ・エル・マンデブ海峡そのものを封鎖する可能性に繰り返し言及してきた。4月19日にはフーシ派幹部が「一度封鎖すれば、どの勢力も再び開くことはできない」とSNSで発言し、イラン最高指導者の国際問題顧問も「バブ・エル・マンデブ海峡もフーシ派の手中にある」と警告している。さらに7月中旬には、ロイター通信の報道として、イランが米国によるイラン電力インフラ攻撃が実行された場合に備え、フーシ派に対し紅海石油輸送路の封鎖準備を要請していたことも明らかになっている。

バブ・エル・マンデブ海峡は紅海とアデン湾を結ぶ海峡で、世界の海上原油輸送量の約12%が通過するとされる。ホルムズ海峡(日量約2,000万バレルの原油・石油製品が通過し、これは世界全体の石油消費量の約20%に相当)が封鎖状態にある中、サウジアラビアは紅海に面するヤンブー港からバブ・エル・マンデブ海峡を経由するルートへ原油輸送を切り替えており、このルートの最大輸送能力は日量約700万バレル、実際に輸出に振り向けられる量は日量500万バレル前後とIEA等は試算している。つまりバブ・エル・マンデブ海峡は、ホルムズ海峡封鎖下における「最後の迂回路」としての位置づけにあり、ここが封鎖されれば中東産原油の輸送は極めて限定的な代替手段(陸路パイプライン等)に頼らざるを得なくなる。

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1WTI原油先物価格の推移(20262月〜7月、近月終値ベース・概算)

経路のイメージ

  • ホルムズ海峡(日量約2,000万バレル、世界の石油消費量の約20%に相当):2026年2月28日の開戦以降、事実上封鎖・断続的封鎖が継続
  • 紅海/バブ・エル・マンデブ海峡ルート(サウジ、日量最大500万バレル程度):ホルムズ代替ルートとして機能してきたが、今回フーシ派が封鎖を宣言
  • 両海峡が同時に機能不全に陥った場合、中東産原油の海上輸出はパイプライン等ごく限られた手段に依存せざるを得ず、フーシ派側は「原油200ドル」もあり得るとの見方を示している

2. イラン戦争開戦後の原油価格の動き

2026年2月28日、米国とイスラエルはイランの核開発を巡る外交交渉決裂等を理由にイランを攻撃し、いわゆる「イラン戦争」が始まった。この攻撃はイラン最高指導者を含む宗教・軍事要人を標的とし、イランの政治体制そのものへの影響も企図したものとみられている。開戦を受け、ホルムズ海峡の通航船舶数は一時ゼロ隻まで落ち込み、WTI原油は開戦前の1バレル90ドル前後から大きく変動する展開となった。

主な節目は以下の通りである。

時期 主な出来事と原油価格の動き
2/28 米・イスラエルがイラン攻撃、イラン戦争開戦。ホルムズ海峡の通航が事実上停止(100隻超/日→ほぼゼロ)
3月中旬〜4月上旬 米国が停戦条件を提示するもイランが拒否、米国が大規模攻撃の構えを見せ原油価格に上昇圧力
4/7 WTI終値112.95ドルまで急騰。2022年6月16日以来の高水準に到達
4/8 米・イランが2週間の停戦に合意。WTIは前日高値117.63ドルから時間外取引で91.05ドルへ急落
4/9〜4/14 停戦を受けやや戻すも90ドル割れの場面も。IMF調べでは4/5時点のホルムズ海峡通航船舶数は9隻(前年同期の1割弱)
4/17 イランのアラグチ外相がホルムズ海峡封鎖解除を表明。WTI終値83.85ドルまで下落(3/10以来の低水準)
4/30 封鎖長期化懸念が再燃し、WTI(6月限)が一時110ドルを突破
5月 停戦・和平期待とイランのUAEミサイル攻撃等の悪材料が交錯し、原油・株式ともに一進一退
6月中旬 米・イラン衝突再燃でブレント約91ドル、WTI約85ドル前後(1カ月ぶりの高値水準)
7/13 イランがホルムズ海峡でコンテナ船を攻撃、米国が140のイラン関連目標を攻撃。WTI73.23ドル(+2.4%)、米10年債利回り4.57%
7/20〜21 フーシ派がサウジ船舶への海上封鎖を宣言。原油先物が買われドル高進行(ドル円162.39円)。7/21のWTI終値は83.23ドル(+0.90%)

この間の値動きを俯瞰すると、原油価格は「地政学的緊張の高まり→急騰」「停戦・和平期待→急落」を繰り返すボラティリティの高い展開が続いている。特筆すべきは、4月8日の停戦合意発表時にWTIが1日で20ドル超(117.63ドル→91.05ドル)動いたことであり、地政学リスクプレミアムがいかに大きな割合を原油価格に織り込んでいるかを示している。野村證券は、ホルムズ海峡の状況別に4つのシナリオを想定し、迂回パイプラインが機能する場合はWTIが75〜95ドル程度、悲観シナリオでは100〜110ドルで推移するとの見通しを示していた。今回のバブ・エル・マンデブ海峡封鎖宣言は、この迂回ルートそのものを脅かすものであり、シナリオの前提を悪化させる要因といえる。

3. 金融市場への影響:株式・金利・為替

3-1. 株式市場

原油高・地政学リスクの高まりは、当初、日米株式市場に明確な下押し圧力となった。開戦直後の3月には米国株式市場指数(S&P500に連動する指数)が下落し、日経平均のボラティリティ指数(日経平均VI)も急上昇する場面が見られた。もっとも、市場は「イラン情勢はいずれ収束する」との見方も根強く、野村證券は、地政学リスクが2026年4〜6月中に収束し、FRBが年内2回の利下げを実施することを前提に、S&P500が2026年末7,300、2027年末7,600に上昇するとのメインシナリオを示していた。

しかし、その後もイランとUAEへのミサイル攻撃(5月4日)など断続的な悪材料が続き、S&P500は「地政学リスクの後退で上昇→再燃で反落」を繰り返す展開となった。5月22日時点では和平期待を背景に8週連続高となる場面もあったが、原油価格の高止まりがFRBの利下げを難しくするとの懸念が、AI関連の大型ハイテク株を中心に重荷となった。7月に入り米・イラン衝突が再燃すると、ナスダックが下落し半導体関連株(マイクロン等)に急落がみられる一方、エネルギーセクター(XLE)には資金流入が続くなど、セクター間でも明暗が分かれている。

日本株については、日経平均は7月10日時点で68,943円(前日比+1,199円)まで戻す場面があった一方、7月13日には米・イラン衝突再燃を受けて1,315円安の67,242円に反落した。7月21日早朝時点でのシカゴ日経平均先物は65,130円と、フーシ派の海上封鎖宣言を受けて上値の重い展開が示唆されている。

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2:米10年債利回り、日経平均・ドル円の相対推移(イメージ、開戦前=100

3-2. 金利

イラン戦争の開戦は米国債利回りにも明確な影響を与えた。開戦直後、原油高によるインフレ長期化懸念からFRBの利下げ観測が後退し、特に短めの年限で利回り上昇が目立った(3年債利回りは+0.49%pt、10年債利回りは+0.40%pt、SBI証券レポートより)。この結果、米長期金利は当面4〜5%のレンジで高止まりするとの見方が広がった。7月13日時点の米10年債利回りは4.57%で、原油価格の再上昇に連れて高値圏で推移している。ソニーフィナンシャルグループのレポートは、イラン情勢が収束すれば期待政策金利は短期的には低下し得るものの、需給ギャップの改善や物価上振れを背景に中長期的には上昇に向かうと分析しており、地政学リスクの解消それ自体が金利低下要因とは単純には言い切れない点に留意が必要である。

FRBは5月に新体制(議長交代)に移行しており、金融政策運営の不透明感が金利のボラティリティを高める一因ともなっている。原油価格の高止まりが続く場合、利下げペースの一段の後ずれ、あるいは金融引き締め的な政策運営を余儀なくされるリスクがある。

3-3. 為替

為替市場では、イラン戦争開戦以降、ドル高・円安傾向が明確になっている。三井住友DSアセットマネジメントの分析では、2026年2月28日の開戦を境にドル円レートが大きく上昇したことが指摘されている。これは、石油供給の混乱が長期化した場合、資源輸入国である日本経済への打撃が大きい一方、米国は産油国としての強みを持つため、地政学リスク時にはドルが選好されやすいという構図によるものと考えられる。

直近でも、7月20日にフーシ派が海上封鎖を宣言した直後のロンドン市場では、原油先物の上昇を受けてドル買いが優勢となり、ドル円は162.39円、ユーロドルは1.1421ドルまでユーロ安・ドル高が進んだ。ドル円は7月に入り161〜163円台のレンジで推移しており、地政学リスクの高まりの都度、円安方向に振れやすい地合いが続いている。

4. インフレ・実体経済への波及

原油価格の高止まりは、ガソリン・電気料金等を通じた直接的な物価押し上げ効果に加え、海運コストの上昇(迂回航路の利用によるタンカー手配の逼迫・保険料上昇等)を通じた間接的なコストプッシュ圧力ももたらす。Forbes JAPANの報道によれば、過去のホルムズ海峡封鎖時には米国のガソリン平均価格が1ガロン=4ドルを上回る水準まで上昇した実績があり、バブ・エル・マンデブ海峡の封鎖が現実のものとなれば、同様、あるいはそれ以上の物価押し上げ圧力が生じる可能性がある。

日本にとっては、原油・LNG等のエネルギー輸入価格上昇に加え、既述の円安がこれに重なることで、輸入物価上昇を通じた「二重の物価押し上げ圧力」が生じやすい点に注意が必要である。日本総研は、米・イラン戦闘が停止した場合でも原油価格は当面100ドル前後で高止まりし、戦闘再開となれば150ドルに達する可能性があるとの見通しを4月時点で示していた。今回のフーシ派による海上封鎖宣言は、まさにこの「戦闘再開・地政学リスク再燃」シナリオに近い性質のものであり、インフレ長期化リスクを改めて意識させる材料といえる。

5. 今後のリスクシナリオ

バブ・エル・マンデブ海峡封鎖を巡る今後の展開について、複数のシナリオが想定される。

シナリオ 想定される展開 原油価格・市場への含意
楽観シナリオ 封鎖宣言が限定的・象徴的にとどまり、実際の航行は大きく妨げられない。外交的働きかけや米軍による安全確保で早期に沈静化 WTIは70〜90ドル程度のレンジに回帰。株式・金利への影響は一時的
標準シナリオ 散発的な船舶攻撃・拿捕が断続的に発生し、保険料・迂回コストが上昇。紅海ルートの実効輸送量が徐々に減少 WTIは100ドル前後で高止まり(日本総研の標準シナリオと整合的)。FRBの利下げ観測後退、円安圧力持続
悲観シナリオ ホルムズ・バブ・エル・マンデブ両海峡が同時に事実上封鎖され、中東産原油の海上輸出が大きく制限される WTIが150ドル、フーシ派が言及する200ドルも視野に。世界的なリスクオフ、株安・金利上昇・急激な円安が同時進行するリスク

現時点(7月21日)では、フーシ派の宣言はサウジアラビア船舶を対象とするものであり、海峡そのものの全面封鎖には至っていない。ただし、フーシ派・イラン双方が過去数カ月にわたり同海峡の封鎖能力を繰り返し誇示してきた経緯を踏まえると、状況が悪化する場合に備えたシナリオプランニングが重要である。特に、①サウジアラビア以外の船舶・第三国籍船への攻撃拡大の有無、②米軍・多国籍海軍によるエスコート強化の実効性、③イラン本体とのホルムズ海峡封鎖状況との連動、の3点が今後の展開を左右する主なポイントとなる。

6. まとめ

2026年2月28日のイラン戦争開戦以降、原油価格はホルムズ海峡の封鎖・解除の観測をめぐって100ドル前後を中心に大きく変動してきた。今回のフーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡での海上封鎖宣言は、ホルムズ海峡封鎖下で機能してきた「最後の迂回路」を脅かすものであり、原油供給網の脆弱性を改めて浮き彫りにするイベントといえる。

金融市場においては、①原油高→インフレ長期化→FRBの利下げ観測後退→長期金利上昇→株式のバリュエーション調整、②地政学リスク→安全資産としてのドル選好→円安進行→日本の輸入物価上昇、という2つの波及経路が確認されており、いずれも過去数カ月間、断続的に市場を揺さぶってきた。今後、封鎖の実効性や米軍・各国の対応次第で、原油価格・株式・金利・為替のいずれについても振れ幅の大きい展開が続く可能性が高く、引き続き中東情勢の推移を注視する必要がある。

出所:NHKニュース、読売新聞、共同通信(Yahoo!ニュース)、中央日報日本語版、Forbes JAPAN、日本経済新聞、野村證券(NOMURAウェルスタイル)、日本総研、JOGMEC、三井住友DSアセットマネジメント、ソニーフィナンシャルグループ、SBI証券、moomooコミュニティ、みんかぶFX/為替、Investing.com、株探等の各種報道・レポートに基づき作成。本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。将来の市場動向を保証するものではなく、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。